2019年 映画トップ5
2019年は185本の映画を観た。
例年通り、10本選ぼうと思ったのだが、いざ選ぼうとよかったものに印をつけていくと10本もなかったので、いっそのこと今年は5本だけにしたいと思う。
自分でガッツリ作るようになると、自ずと人の作品に対する目も厳しくなると思う。なんというか「自分にできるかどうか」が基準になるみたいな。「まぁこれくらいなら撮れそう」とか「これくらいならおれも考えれそう」っていうのだと、自ずと評価は低くなる。一方で「新しい組み合わせ」とか「いままでやられて来なかったもの」に対しては以前より、一層敏感になったというか、ハッキリそういうものしか評価できなくなったというか。作り手は常にそこを目指すべきだからな。
というわけで私の2019年の新作映画トップ5以下の通り。
5.愛がなんだ
『(500)日のサマー』と並んで「恋愛の全て」を描いてしまった感ある。『500日』より一個低次?の、あそこまで美しくはないが、だがたしかに存在する世界をつぶさに描いたというかね。
2つのカップルの話が上手く対比になってて、有機的に絡み合う構成とかも「うんまっ!」って唸らされたし。近年、邦画になかった脚本の良さを感じた。
こういうのが出てくると、描きにくくなるんだよな...。全部「これ"愛がなんだ"だよね」って言われそうで。
4.クライマックス
「これ、どうやって撮ってる(演出してるの?)」の連続。そういう「撮り方の想像がつかない」点で、すごいなと。少なくともいまの自分では絶対できないことをしているというか。ノエ氏は常にそういうフロンティアを開こうとしているところを尊敬する。
3.マリッジ・ストーリー
まぁ、一方でこれは正攻法の気持ち良さというか。
実力のある監督が実力のある俳優と作り上げた感。オーセンティックというかね。
2.ジョーカー
「みんながやりたい」ような際どさを持った話をきっちりと仕立てあげ、そしてそれをきちんとマスに受け入れもらって興行的にも成功させてしまった点で、ロールモデルとして。
1.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
正直『デスプルーフ』以降のタラ作品があまり好きでなかった自分的には「おれたちのタラis back」な作品。
その世界に浸り、キャラクターと一緒に時間を過ごす幸せよ。
あとは、10月に行ったLAとNYの、主に2つのホラー系映画祭で観た映画の中でヤラれたものをいくつかあげとく。
Pain and Glory
→アルモドバルの新作。監督の自伝的内容なのだが、特に少年時代の思い出パートの美しさに惹かれた。
わりと「なんでもない」こじまんりとした感じも好みだった。
Swallow
→ブルックリンのホラーフェスで。金持ち男と結婚した女性の主人公。一見、幸せそうな生活に見えるが、女はどこかその生活に違和感を感じている。そんなとき、女性は人知れず"異物を飲み込む"ことで自我を保とうとする。石、砂に始まり、クギや電池まで...なかなか衝撃的な一本。
ヨーロッパ的アプローチで、ニートな画面構成で異常な心理を描くっていう。私好みな秀作であった。
Kokodi Kokoda
→これはなかなかにぶっ飛ばされた一本。
幼い子どもを亡くし、関係の冷め切った夫婦がある日キャンプに出かける。その場所で夫は、「嫁がある変態集団に殺される」というループに見舞われる(嫁が殺され、自分も殺された直後にまた目を覚ますと、殺される直前に時間が戻っていて、またその集団に襲われる、というシステム)。そこで、夫は妻が殺されないようになんとか策を練るのだが、やっぱりダメで...、みたいな話。見かけによらず、愛とは、みたいなディープなテーマにちゃんと着地していくとこが良い。
正直、これあんま人に教えたくないんだけどな。自分だけの体験にしたいみたいな。
Greener Grass
極彩色のダーク・シニカル・コメディ。
新しい才能の予感。次回作が楽しみである。
あとは2019年の作品ではないもので、旧作で観たものとしては『寝ても覚めても』にはマジでやられた。恋愛映画の皮を被せながら「生きるとは」みたいな深いイイテーマにグイっと持っていくみたいな。クールでした。
NYから帰る直前に観た『Lords of Chaos』も印象深い。てかあれまだ一年前なのか...。NYに一応住んでたっていうのがいまだとちょっと信じがたい感じなのだけど。
最後に、現在の自分の状況はというと、新作を撮り終わって絶賛編集中という状況である。
どう受け入れられるか、そもそも映画祭通るかは未知だが、個人的にはなかなかイイものが撮れたんでないかと思う。素材観ててもそう思う。
とこの作品が自分の状況を少しでも変えてくれて、より良い次回作に繋がってくれればいいのだが。ということを思う2020年の年始である。